銀行概要 | EU主要国の中央銀行 [ユーロシステム構成行] |
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外貨準備高 | 1980億ドル [2018年] |
支店数 | 36 |
従業員数 | 10,000人 |
事業内容 | 市中銀行向けの銀行業務、金融監督業務、政府向け銀行業務、外貨準備業務、ユーロ発券・回収業務など |
1999年に発足した欧州中央銀行 (European Central Bank: 通称ECB) は、ユーロを導入したEU加盟国の中央銀行としての役割を果たしています。
そして、EBC発足前から存在しているEU加盟各国の中央銀行 (ECBと対比して、National Central Bank: NCBとも呼ばれます) は、EBC発足後も「銀行の銀行としての業務」「金融機関の監督業務」「政府の銀行としての業務」「外貨準備業務」「ユーロ発券・回収業務」などを担っており、各国の金融システムにおいて重要な役割を果たしています。ジェットチェッカーは、EUの中核を成す主要国の中央銀行において採用されています。
中央銀行という特性上、導入銀行では以下の課題を持っていました。
ユーロ圏の各国中央銀行は、ユーロ紙幣の発券だけでなく、市中の銀行と協力して「汚損や破れのある紙幣の回収(流通紙幣の品質維持)」という業務があります。汚れやシミ、破れているユーロ札を回収して、流通している紙幣の品質を一定レベル以上に保つという業務です(フィットネス・ソート [fitness sort] とも呼ばれます)。
中央銀行に集められる紙幣は膨大で、日々数十万枚、数百万枚の紙幣の計数が必要となります。「回収すべき汚損紙幣」と「回収の必要がない紙幣」を高速に判別する能力が紙幣計数機には求められています。
2013年に、ユーロ・シリーズ2、通称ES2と呼ばれる新しいユーロ紙幣が発行開始となりました。ユーロ圏で新紙幣が発行されると、旧紙幣は「市中の銀行が回収する」場合と、「中央銀行が直接回収する」場合の両方があります。大半の紙幣は市中の銀行が回収していますが、中央銀行の支店に直接旧紙幣を持ち込んで交換してもらうことも可能です。
このため、中央銀行のキャッシュセンターならびに支店において、回収された新旧ユーロ紙幣の計数業務が必要となります。これには膨大な工数がかかるため、業務を効率化する必要があります。
導入銀行では、ユーロに加えてイギリスポンド、スイスフラン、そしてアメリカドルを主に取り扱っています。キャッシュレス化の進展に伴い、紙幣自体の流通量は減っていますが、特にアメリカドルでは精巧な偽札が現在でも新たに出現しています。目視では見分けがつかない偽札をいかに判別するかが重要な課題となっていました。
加えて、また中央銀行では、ユーロ紙幣を取り扱う紙幣計数機は全て、ECBの認証を取得した製品を利用する必要があります。中央銀行で紙幣の回収を行う際には、汚損や破れのあるユーロ紙幣や、旧ユーロ紙幣を正しく識別する必要があります。
ジェットチェッカーは、中央銀行のキャッシュセンター、ならび中央銀行の支店の両方に導入されています。
一般銀行を経由して、全国から集められた紙幣を一括で処理するための中央銀行の施設が「キャッシュセンター」です。中央銀行では、ユーロ紙幣の回収業務を行っており、大量のユーロ紙幣の計数、またイギリスポンド、スイスフラン、アメリカドルの計数も必要となるため、多数のジェットチェッカーが配備されています。
中央銀行として、各地域の銀行や金融機関と取引を行うための支店でも、ジェットチェッカーが導入されています。中央銀行と一般銀行間の決済はオンラインであるため、実物の紙幣が用いられることはありません。しかし支店では、ユーロ導入前の旧通貨とユーロとの両替業務、汚損紙幣の交換、記念通貨の販売業務といった業務を行っているため、紙幣の計数が必要となっています。
導入先の中央銀行では、1,000台を超えるジェットチェッカーが導入されています。
各金融機関でそれぞれ数千台のジェットチェッカーが導入されていますが、効果は目覚ましいものでした。支店ならびキャッシュセンターの両方で、偽札検出率の向上、ならび業務効率アップを実現しました。また、キャッシュセンターにおいては、汚損紙幣の回収の効率化も合わせて実現しました。
なお、キャッシュセンターでの利用は、場合によって1台あたり数十万枚、数百万枚の計数を行うという厳しい利用環境となります。よって、年に数回、消耗部品の交換などのメンテナンスを行っています。